日本のスタートアップビザ:起業家への道筋と、AIインターンシップの位置づけ
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日本のスタートアップビザ:起業家への道筋と、AIインターンシップの位置づけ

日本のスタートアップビザは、最長2年間の事業準備期間を認め、その後経営・管理ビザへ切り替える制度です。2025年10月の改正で、切り替えのハードルは上がりました。行政手続きの全体像と、AIインターンシップにできること・できないことを整理します。

Ryan Ahamer読了目安 3分

日本のスタートアップビザは、海外の起業家に最長2年間の事業準備期間を与え、その後経営・管理ビザに切り替える制度である。2025年10月の改正で切り替え先のハードルが大きく上がったため、何の足場もない状態で来日して会社を立ち上げるという計算は成り立ちにくくなった。

多くの解説記事はスタートアップビザを単独の制度として扱う。しかし実態は違う。スタートアップビザは「日本に住める状態」と「日本で会社を経営できる状態」をつなぐ橋に過ぎない。橋の長さは2年、橋の向こう側の高さは最近引き上げられた。

本記事はその橋の仕組み、2025年10月の改正、発行主体である自治体、そして無料のAIインターンシップがこの構図のどこに位置するかを整理する。最後の点については冒頭で率直に書いておく。ビザを発行する研修プログラムは存在しないし、受け入れ企業が在留資格を決めるわけでもない。

スタートアップビザの仕組み(在留資格「特定活動」)

スタートアップビザは独立した在留資格ではない。経済産業省の外国人起業活動促進事業に基づき、認定自治体が発行する起業準備活動計画確認証明書を経て付与される「特定活動」という在留資格の運用形態である。

最長2年間
スタートアップビザの準備期間
Source: 経済産業省 外国人起業活動促進事業(2025年4月、6か月→2年に延長)

準備期間は当初6か月、2020年に1年、2025年4月に2年へと段階的に延長されてきた。長い準備期間が重要になる理由は明確で、東京で起業する場合、法人設立・人材確保・事務所確保・商業実績の積み上げに時間がかかる。2025年10月以降の経営・管理ビザの要件強化は、この準備期間の価値をむしろ高めている。

申請対象

日本のビザ制度の中ではスタートアップビザのハードルは比較的低い。学歴要件はなく、所得要件もなく、事前の資本要件もない。要求されるのは以下のとおり。

  • 受け入れ自治体が現実的と判断する事業計画
  • 準備期間中の生活費の証明(自治体により異なるが20万円程度が目安)
  • 旅券および本人確認書類
  • 起業準備活動計画確認証明書を発行する自治体の存在

ここで重要なのは自治体がゲートキーパーであるという点。各自治体は独自の重点分野を持ち、Invest Tokyoは高成長ベンチャー、渋谷スタートアップサポートはクリエイティブ産業とWeb3、京都は製造業・ライフイノベーション・社会的インパクト、大阪はOsaka Innovation Hubを通じて先端産業の実証を重視している。

ある自治体で却下されても別の自治体に再申請できる。判断は国レベルではなく地域レベルで行われる。

2025年10月の改正と意味するもの

2025年10月、スタートアップビザの切り替え先である経営・管理ビザの要件が大幅に強化された。最も影響の大きい変更は、資本金・出資総額の要件が500万円から3,000万円へと引き上げられたという内容である。

戦略的な意味は単純である。2025年10月以前は、海外の起業家がゼロから500万円の小規模法人を立ち上げ、そこから前に進むという経路が成立した。2025年10月以降は、同じ起業家が3,000万円規模の資本(または到達への明確な道筋)、事務所、要件を満たす常勤雇用、経営経験または関連学位を提示する必要がある。

難しくなったのはビザではなく、その向こう側に置くべき会社のほうである。

この区別が計画上の全問題である。第一段階は行政手続きにすぎない。第二段階は事業そのものであり、来日して間もない国で3,000万円の水準を満たす会社をゼロから立ち上げるのに、2年は決して長くない。

取得方法

手順は不透明ではなく、行政的なプロセスである。順序が重要になるのは、自治体審査が入管審査の前段階に位置するため。順序を飛ばすと申請がやり直しになる。

受け入れ自治体を選定する

スタートアップビザを発行できる自治体を選ぶ。2026年中盤時点で東京都・横浜市・渋谷区・大阪市・京都府・福岡市・名古屋市・仙台市が主要発行先。各自治体は独自の申請窓口と審査委員会を持ち、審査スピード・重点分野・現地サポート体制が異なる。選定は戦略的な判断であり、最速で発行する自治体ではなく、事業に合う自治体を選ぶこと。

事業計画書を提出する

外部の経営アドバイザー(会計士・投資家・経営メンター)による審査が行われる。事業の実在性・実現可能性が問われる。東京都・大阪市は計画書テンプレートを公開しており、東京都の審査は約1〜2か月、大阪市は全工程で約5か月とされている。

起業準備活動計画確認証明書を受け取る

自治体審査の通過後、起業準備活動計画確認証明書が発行される。出入国在留管理庁の在留資格申請に必須の書類で、有効期限は3か月。発行後はすみやかに在留資格認定証明書交付申請に進むこと。

在留資格認定証明書を申請する

管轄の地方出入国在留管理局に在留資格認定証明書交付申請書を提出する。確認証明書、パスポート、写真、生活費の証明、住居の確保情報を添付。審査期間は1〜3か月が一般的。

在留資格「特定活動」へ切り替える

認定後、海外から渡航するか、日本国内で在留資格を「特定活動」に変更する。2025年4月以降、最長2年間の準備期間が認められる。

2年間で経営・管理ビザの要件を満たす

準備期間中に法人登記・事務所確保・常勤雇用1名以上(日本人・永住者・所定の長期在留者)・所要資本の確保を進める。特定活動の在留期限が切れる前に経営・管理ビザへ移行する。

発行自治体の一覧(2026年版)

スタートアップビザは2025年1月に全国展開が完了。2026年中盤時点の主要発行自治体は以下のとおり。

地域プログラム名参照
東京都(広域)Business Development Center Tokyo スタートアップビザInvest Tokyo
東京都・渋谷区渋谷スタートアップビザShibuya Startup Support
横浜市横浜市スタートアップビザ横浜市
大阪市大阪市スタートアップビザ申請受付Osaka Innovation Hub
京都府京都府外国人起業活動促進事業京都海外ビジネスセンター
福岡市福岡市スタートアップビザ福岡市スタートアップカフェ
愛知県・名古屋市あいちスタートアップビザ愛知県
仙台市仙台市スタートアップビザ仙台観光国際協会

各プログラムで得意分野と審査スパンが異なる。最速で発行する自治体ではなく、事業に合う自治体を選ぶことが本質的に重要となる。

経営・管理ビザへの切り替え(第二段階)

経営・管理ビザは、外国人が日本で事業を経営する際の長期在留資格。2025年10月以降の切り替え要件は、出入国在留管理庁での最新確認を前提として、概ね以下のとおり。

  • 日本国内で登記された法人
  • 事業所として用いる事務所(住居ではなく商業用賃貸物件)
  • 現行の閾値に基づく資本金または出資総額(2025年後半時点で3,000万円との報道が広く出ている)
  • 常勤の有資格雇用者1名以上(日本人・永住者・所定の長期在留者)
  • 経営に関する3年以上の経験、またはMBAや関連修士・博士相当の学位
  • 公認会計士など有資格専門家による事業計画レビュー
  • 申請者または有資格雇用者による事業遂行に十分な日本語能力

経営・管理ビザは1年・3年・5年の在留期間で更新できる。永住許可の要件は在留歴や高度人材ポイントの有無などにより大きく異なるため、専門家への確認が必要である。

AIインターンシップの位置づけと、その限界

Aoyama Professionals(APRO)はビザを発行する立場にない。スタートアップビザの申請を代理・保証する立場にもなく、入管の判断に影響を与えることもできない。逆のことを書けば事実に反するし、それを信じた応募者が損をする。

APROが提供しているものを率直に書けば、無料・4週間・リモート中心のプロジェクト型インターンシップである。APROおよびOrbwevaのポートフォリオ案件に取り組み、課題の達成度は毎週確認され、成果物の発表(ピッチ)とコミュニケーションの訓練が必須となる。修了者には、取り組んだ内容を記載した修了証を発行する。成績上位者はショートリストに掲載され、東京の受け入れ企業に候補として届けられる。受け入れ企業での就業はショートリスト入りの結果であって、4週間のインターンシップそのものが就業先を意味するわけではない。

その先は本人の意思で進む階段になる。アカデミーは月額¥15,000のサブスクリプションで、自習形式のClaude Codeプログラム、MVP構築、月5回・各15分のスタンドアップ、コミュニティで構成される。アクセラレーターは招待制の3か月プログラムで、アカデミーで検証済みのMVPを持つことが前提。条件は招待時に開示される。

スタートアップビザの審査書類という観点で本当に関係があるのは、このうち3点だけである。

  1. 審査されるのは事業計画であり、それは作らなければ存在しない。 自治体の審査委員会は計画書を読み、事業が本物かどうかを判断する。アカデミーで構築・検証したMVPはビザの必要書類ではないが、説得力のある計画書を書くための材料になる。初回申請者の多くはその材料を持っていない。
  2. 主張より記録が効く。 4週間の計測された実習記録、実際の成果物を記載した修了証、公開された成果物。いずれも「やったと言っている人」ではなく「やった人」を示す。審査委員会は証拠を見る。
  3. 人との関係は来日前ではなく日本国内で生まれる。 ショートリスト経由で出会った受け入れ企業が、初期顧客・推薦者・アドバイザーになることはありうる。ただしそれは約束された結果ではなく、配属の保証でもなく、自治体自身の判断を代替するものでもない。

よくある質問

スタートアップビザの申請自体に3,000万円の資金が必要ですか? 不要。資本要件は次段階の経営・管理ビザに適用される。申請には生活費の証明(約20万円が目安)と、2年以内に経営・管理ビザの要件へ到達する妥当な事業計画が求められる。

2年以内に経営・管理ビザの要件に届かなかった場合は? 特定活動の延長は原則できない。雇用に切り替える場合は技術・人文知識・国際業務、年齢と卒業時期の条件が合えばJ-Findへの移行が現実的な選択肢となる。代替経路を早い段階で想定しておくことが重要になる。

APROはスタートアップビザを取得してくれますか? できない。発行するのは受け入れ自治体、在留資格を許可するのは出入国在留管理庁である。APROができるのは、審査で問われる実績・スキル・関係性を積み上げる支援まで。


スタートアップビザは魔法ではなく、行政手続きにすぎない。2025年10月の改正は第二段階のハードルを上げたが、第一段階の手続きを変えたわけではない。実質的に変わったのは、足場のない状態から起業家への道筋を試みることのコストと、2年の時計が動き出す前に必要な事業実体の量である。

その実体を作るのは手間のかかる作業であり、ビザの書類を開く前から始まっている。

→ まずは無料のAIインターンシップから。その先のサブスクリプション型プログラムはAPROアカデミーで確認できる。

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